Audio Interface for AnalogDiscovery2 の製作
2021/2/1 7M4MON
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はじめに
以前、AnalogDiscovery2とLabviewでオーディオアナライザーを作った際、
歪み率測定はレンジ内の最大振幅(5.1Vp-p)で0.07%、100mVp-pで2.4%程度の歪み率でした。
この辺がAD2の実力かな?と思っていたのですが、トランジスタ技術2020年9月号に
USB マルチ測定器 Analog Discovery で作る私のR&D センタ〈24〉
ノッチ・フィルタの設計・製作 最小分解能0.00001%! 1kHzひずみ率計(遠坂俊昭氏)
という記事があり、どういう仕組みか気になり、さっそく読みました。
詳しくは記事に書かれていますが、基本的な原理は、基本波をノッチフィルタで除去し、
高調波を増幅することで歪成分を抽出するというものでした。
で、記事では、「AD2の素のダイナミックレンジはおよそ70dBなので、歪み率の測定は
そのまま使った場合は0.1%程度まで」とされていました。
なるほど、たしかにAD2のビット数は14bit(最大84.28dB)で、最大振幅時に SINAD 62.77dB が
測定できたということは、5.1Vp-pの信号に対して下位2ビット分=0.6mV程度のノイズ+歪
含まれていたということで、妥当な値が計測されたものと思います。
ならば、100mVp-pの振幅で 歪率2.3%≒SINAD 32.77dBは最大振幅から30dB低い値であり
100mV=-20dBVは5.1V=14.15dBVより34dB低いので、AD2の実力というよりは、
レンジに対して振幅が小さすぎて単に測定出来てないんじゃないかと。
そこで、ダイナミックレンジを改善するため、インスツルメンテーションアンプによる
ゲイン切替可能なプリアンプを製作することにしました。
また、アンチエイリアシングフィルタとしてfc=30kHzの3次のサレンキー型アクティブLPFを構成しました。
内部はこんな感じです。
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電源について
アナログ部のダイナミックレンジを上げるため、オペアンプの電源は±15Vとします。
できればAnalogDiscovery2から電源を一緒に取りたいので、5Vから正負の電源を生成するDCDCを使用します。
DCDCのスイッチングノイズの影響を軽減するためLDOを挿入することにしたので、両電圧DCDCの出力電圧は±18Vとしました。
Aliexpressで入手できる両電源生成モジュールは12V出力なのですが、赤枠内の抵抗を調整すると電圧変更できます。
商品ページにICの情報はないので型名は不明でしたが、同じSOT-23のTPS61040と同じ計算式が使えました。
上記赤枠内20kΩに39kΩの抵抗を亀の子でつけると、計算上は1.233*(1+180/13.22)=18.02Vです。
ちなみに、回路構成は下記のものと同等と思われます。
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プリアンプ部
AD2のAD入力は差動なので、あえてシングルエンドにはせず、差動入力ができるようにします。
インスツルメンテーションアンプの前半部は抵抗の切り替えでゲインを決定できます。
オープン時に0dBとなるのは計算上自明で、帰還抵抗を10kとしたとき、ゲイン40dBなら202.02Ω、ゲイン20dBならば2.222kΩです。
この抵抗値は、多回転ボリュームで精密にゲインを合わせられるようにします。
具体的には、オープン、150Ω+多回転ボリューム100Ωと、1.5kΩ+多回転ボリューム1kΩを
ON-OFF-ONのトグルスイッチで切り替えられるようにしました。
AD2のNetworkアナライザ機能を使用して下図のように正確にゲインを合わせます。
インスツルメンテーションアンプの後段にfc=30kHzの3次のサレンキー型アクティブLPFが
挿入されていますので、上図のような特性になりました。
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効果と感想
100mVp-p正弦波を A:プリアンプ不使用、B:プリアンプ有効 で測定したときの図を示します。
A:プリアンプ不使用
B:プリアンプ+20dB
上記で分かる通り、ダイナミックレンジが改善され、本来の実力である1%以下の歪み率が測定できるようになりました。
10mVp-pでもプリアンプを入れることで1%程度まで測れます。
これ以上の性能を得るには…
- トラ技の記事にあるように、ノッチフィルタを利用する
- DCDCコンバータをやめて、別途、±電源を準備する
- 精密抵抗を使用してアンバランスをなくす
- 高性能なオペアンプに変える
といったところが考えられます。
いくつかのデータシートでは、ADCのアンチエイリアシングフィルタとして2次のフィルタが紹介されています。
この作例では3次を使用しましたが、キレが足りておらず性能不足と思われ、
トラ技2018年2月号の第12章で紹介されているとおり、7次程度が必要だったかなぁ…と。
以上